その男は普段まさしく虫も殺さない優しい性格をしていた。そう、あれは事故だったのだ。。
男はある日の朝、出勤する途中、足の指先に違和感を感じていた。
「靴に石でも入ったかな?」
それくらいに考えていた男は忙しかったこともあってついそのまま1日を過ごしてしまった。しかしそれが過りだった。。
足の指先の違和感も忘れ1日の仕事をこなし家に帰った男は、靴を脱ぎ、妻と子ども達と一緒に食事をし、子どもたちを連れお風呂へ向かった。
「あれ?お父さんなにこれ?」
最初に異変に気付いたのは娘だった。
「足の指に何かついてるよ」
ふと自分に目を向けた男は心臓が止まるかと思うほどの衝撃を受けた。直後男の全身にはおぞましい嫌悪感が電流のように走った。
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靴下を脱いだ男の足の親指の第一関節の上のあたりで潰れたカメムシが張り付いていた。
1日のハードワークで蒸れた中年男の靴下の中で乾燥する事もなくそいつの体液と男の腿液が混じり合い、ソレはえもしれぬ強烈な臭いを放っていた。
「あっちへ行っていなさい!お母さん!頼む!」
まずは最愛の娘を安全な場所へと避難させた男は、震える手で慎重にソレを足の親指から引き剥がし、トイレに流した。
そしてすぐさま風呂場へ行き、男は大量のボディシャンプーを使って足を洗った。
「と、とれない…!」
動揺する男。洗っても洗ってもとれないのだ。
カメムシの姿が。
皆さんは魚拓というものをご存知だろうか。ちょうどそんな感じで男の足の親指にはカメムシ拓がクッキリと現れていた。
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一寸の虫にも五分の魂という。もしこの虫に魂があったなら蒸れた靴下の中で圧死する自分の運命を呪っただろう。少しでも自分の怨みをまわりに撒き散らして死のうと思っただろう。
きっとコレはそういう事なんだろう。
男がいくら洗ってもこすってもこの恐るべき怨念の刻印は落ちる事がなかった。むしろ日に日に濃く、大きくなっているような気がしていた。
虫も殺さないはずの男は次の日から自分の中に何か黒い感情が芽生え始めている事を感じた。それから1年後、優しかった男はもうここにはいない。ドス黒い感情に支配された悪意の塊となってしまった。
そして今、椅子に縛られた私の前で不思議な笑みを浮かべながら手にボロボロの靴下を持って立っている。
靴下の先の方がちょっと動いたのを見て私はようやく自分の運命を理解した。
今から私も男と同じ刻印を受けるのだ。
この話は半分くらい実話である。
解説
カメムシさんの体液に長時間触ると火傷のような症状になります。外に干した服とかにくっついてる場合があるので注意しましょう。
ちょっと可愛くしてみた。
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